金無し、能無し、きもおたく

文系大学生、童貞。

出逢い系で34歳の年上女性と出会った話②

供養その2。

昨日初めて会った日のことを書いたが、一応続きがあったりする。

一応このシリーズで終わりなのだが、一体これは何処の誰に需要があるんだろうか。

では、どうぞ。




前回、立たぬ戦いを繰り広げた後、1ヶ月弱ラインを続け、多少なりとも恋愛対象となっていた彼女だったが、毎日のようにラインをするうち、酒というフィルターを通さない姿がだんだんと垣間見えてきた。


彼女は、とにかくラインの返信が早い。寝ている深夜を除けば、1時間以内には必ず返ってくる。最初こそやれ家で酒飲んだだの飼っている犬がどうだの趣味が水泳だの雑談をしていた。私としては早くまた会い、ノルマを達成したかったのだが、向こうは平日は仕事休日は実家の生活であり、自然会う暇もない。しかし、立たぬ戦いを繰り広げた以上、後には引けない泥沼試合となったため、ラインだけはどうにか続けなければならなかったのである。とりあえず私は、無意識のうちに心の片隅で恋愛除外対象になりつつも、仕事お疲れ様です、など当たり障りのないラインをしていた。その結果、自然と相手の仕事の話にトークが傾いていった。そこには大きな穴があるとも知らずに。これは私の予想だが、結論から言うと、恐らく彼女は職場で仕事が出来ず、嫌われている。それに、彼女は「売られた喧嘩は買う」というスタンスなので、仮にそれがただの注意だったとしても売られた喧嘩は、、で言い返すんだろう。彼女は、ラインで仕事の話になると、最初こそいついつが仕事だの明日は休みだから実家に帰るだの言っていたのだが、次第に話題は仕事の愚痴へとシフトしていった。


最初は、仕事内容を軽く聞くところから始まった。仕事というのは派遣の精密機械の検査らしい。一日どれぐらい機械が来るんですか?とか、どんな機械を検査するんですか?とか、普通に仕事の内容を聞いていたのだが、それは突然であった。突然、パワハラの話に移行したのである。そこからはもう早かった。連続でウン年間パワハラを受けてきた、周りに負けずに黙々と仕事をしているなど矢継ぎ早にパワハラ事情が飛んできたのである。最初こそ大変ですねー とか、パワハラは自分も耐えられません、という話で合わせていたのだが、結果、社畜にストゼロを注ぐかのごとく愚痴大会となっていったため、次第に自分から連絡することも無くなっていった。

だが、相変わらず向こうからラインはくるし、返すと秒で既読となる。既読になった以上は返信が返ってくるわけで、また会話を続けなければならない。面倒になった私は未読無視をすることにした。返すのは基本3〜4時間後。まぁ返すとまた秒で返ってくるのだが。そうしたラインライフを続けていくうち、一つの報告を受けた。なんと、今の仕事を辞めるというのである。突然のラインに戸惑った私は未読無視を決め込んでいたのだが、1時間後、別の仕事を探すというラインがきた。これは来るところまで来た。私の直感がそう囁いていた。とりあえず会ってしまおう。そう決めた私は、とりあえず予定を聞き、去る11月中旬、第二次大戦を仕掛けたのであった。まぁ、その日は相手が仕事をやめた2日後だったのだが。



どういうわけか、自分が誘ったにも関らず、当日が近づけば近づくほど憂鬱度が日に日に増していった。あれからどんどんラインはひどくなっていき、未読していたらいつのまにかメッセージは取り消されるわ、ほぼ仕事の話だわでもう満身創痍であった。だが、当日、意外にも待ち合わせ場所へ向かう私の足取りは軽かった。相変わらず重いラインは来るものの、会う約束は会う約束である。前回の不戦敗の雪辱を晴らす時がやってきた。バイアグラこそ買わなかったものの、酔っていないし、2日溜め込んできたことを考えれば、勝機は十分であった。そう考えると何故か穏やかな気分になれた。私は、まもなく空港に着陸する飛行機の乗客のようなあの高揚感を感じつつ、自転車を漕いだ。

ラインで先に着いたということは聞いていたので、停車している車の窓をノックする。約1ヶ月ぶりの対面。暗くてよく分からないが、確かに彼女であった。以前と変わらぬあの香水の臭いが鼻につく。夜景を見にいくことは決めていたので、とりあえず彼女が決めた市内の夜景スポットへと車で進む。 目的地までの会話はそこそこ盛り上がった。ただ、どうにも話していて何か違和感がある。話が通じないというか、すれ違うというか、噛み合わない。そんな奇妙な違和感を感じつつ、ガバガバgoogleマップに四苦八苦すること20分、ようやく目的地のある山の上にたどり着いた。が、


謎の建築物がそびえ立っていた。

あまり詳しく書くと場所バレしてしまいそうなので詳細は省くが、何かの縁で外国のどっかの市が建てた、宗教関係の建物らしい。しかし、県内有数の夜景スポットにこんなセンスのかけらもないものを建てるとは、やっぱりこの県はおかしい。夜景自体は非常に綺麗だった。ちょうど街を見下ろす場所にあるこの山は、四方に県内の夜景が広がる。謎の建築物と気味の悪い碑文がある他は、まあデートスポットとしては十分だった。

だが、何故だろうか。私の心に湧き上がる感情は彼女とのデートという甘酸っぱい感想ではなく、なんか、親戚のおばさんと夜景見にきた、そんな感じだった。

山にいる間も絶え間なく会話は続く。といっても向こうが一方的に話すのを聞いているだけなのだが。

夜景を見ていると、彼女は「こういう山とか歩くのとか大丈夫?」と聞いてきた。まぁ別に歩くのぐらいは全然大丈夫だったのでそのまま返事すると「あ、じゃああっち何があるか見に行こっか。」「いや、わたし小さい時から水泳やってたし、こういう歩くのとか自信あんだよね〜」はぁそうですか。まあここは会話が続くようちゃんと返す。「へぇー、中高とかはなに部活入ってたんですか?」「高校はボランティア関係だったけど、中学んときはバトミントンやってた!」なるほど、よっぽど体力には自信あるらしい。言われるままに階段を降りる。が、特になにもなかったのでまた階段を上り始める。すると「痛えー、なんか足痛くなってきたわ」「いや、私扁平足なんだよね、だから足すぐ痛くなるんだわ」いや、歩くの自信あるんじゃなかったのかよ。しかも扁平足って何か聞き返したら超馬鹿にしてくるし。

こんな具合の会話が続き、30分ほどして、山を降りた。



謎建築物の山を後にした私たちであったが、まだ8時にもなっていない早い時間であった。謎建築山は、その夜景の美しさから定番のデートスポットとなっているらしく、道中何軒かのラブホが見られた。決めるならここで決めるしかない。2日放置した風船のようにしぼんだ私の下心を振り絞りつつ車に乗り込む。

「次どこ行く?どこでもいいよ。」相手がいう。「ここくる途中結構ラブホありましたよね。なんかその辺でもいいすけど」若干押してみた。しかし、相手は聞こえなかったかのようにもう一度同じ言葉を繰り返した。「次どこいく?どこでもいいよ。」ただ、これで言葉が終わることなく、彼女は続けた。「ラブホ以外なら。」

しぼんだ風船の空気が完全になくなってしまい、冷たい床へと落ちた瞬間だった。一瞬怯んだ私であったが、とりあえず「じゃ、とりあえず某山の夜景見に行きますか」と告げる。

そこからはもう相槌を打ちつつgooglemapを見るだけの作業であった。私の心は、冷たい床の感触を味わいつつ、下心が徐々に空腹と眠気へと変わってゆくのを感じた。しかしながら、某山といってもどこが夜景スポットなのか分からない。とりあえず登ってみればあるだろうという甘い考えのもと、40分の山道デスドライブが始まった。突然、狭い車内の中で2人きりなのだから会話をする続けてゆく他、道はない。しかし、本当の本当に会話がまるで噛み合わない。どうしてここまで噛み合わないのか、本当に疑問である。

「いやー、なんか眠くなってきましたね」面倒臭くなった私はお持ち帰りアピールでもなんでもなく、私は彼女にそう言った。すると、突然彼女は運転しながら、すべてのヘッドライトを一瞬消灯した。「どう?目覚めた?」と言いつつすぐに点けたが、私は驚きと冷たい感情を隠せなかった。一瞬フリーズしたものの、とりあえず会話を続けるべく言葉を返す。「いや、なんで目覚めるんすか笑 普通暗いところだとよく眠れるでしょ」「私暗いところ好きなんだよねー」


もう、ここまでくると冷めたとかを通り越して訳がわからなくなってきた。私は一体外国人と会話してるんだろうか。いや、人間と会話しているのか。というかそもそも人間とは何なのか。そんな哲学的問いが頭の中を巡る中、車は山の山頂へと登って行く。

しかし、一向に展望台らしきものが見つかることはなかった。展望台こちら、といった看板も無いまま道だけが細くなっていき、とうとう一方通行で軽がやっと通れるガードレールも無い道にまでなった。彼女はというと、「なーんか(霊感的に)嫌な感じがしてきたなぁ」などと訳の分からないことを言いながらそんないつ転落しておかしくないような狭い道をビュンビュン飛ばしていく。





俺、もしかしてここで死ぬのか?





ふと、そんな問いが頭に浮かんだ。一体、私は何故こんな目に遭っているのだろうか。何故、自称霊感持ちでトラブルメーカー、かつ会話が通じない女に自分の命を委ねているのか。何故、こんな女と死ぬかもしれないドライブをしているのか。こんなところで死にたく無い。どうせ死ぬなら、自分の愛する家族、大好きな最高の仲間たち、そんな人たちと運命を共にしたい。頭の中では走馬灯が回転していた。大学に入学した時のこと。初めてサークルを見学しに行った時のこと。サークルの仲間たちと遊びに行ったこと。

走馬灯が次から次へと周る中、気がつくと、車は狭い道を抜け、山を降り始めていた。どうやら、一命を取り留めたらしい。山頂に着いたとき、「どうする?車から降りる?」などと聞かれた気がしたが、全力でお断りした覚えがある。早く帰りたい。早くこの場を去りたい。そんな思いが詰まった言葉を返していたと思う。

山を降りた車は、中心街へと走っていた。このまま待ち合わせた場所へ戻るらしい。よかった。なんとか命だけは助かった。そんな安堵の気持ちがあった。もう私に喋る体力は残っていない。しぼんだ風船はもう、冷たい床と同化していた。

「今日はありがとうございました。」入念に忘れ物がないかを確認して車を降りた。





自分の自転車に乗り込んだ私は満身創痍だった。自転車の前カゴにうな垂れているとすかさず相手からラインが入る。

『今日はありがとう。気をつけて帰ってね』確かこんな内容のラインだった気がする。

とりあえず腹が減った私はすき家へ向かった。目についたキムチ牛丼を注文しつつ、「今日はずっと運転してくださりありがとうございました。夜景の写真は後で送ります」と返し、既読がついて何事か帰ってきたのを確認してブロックした。いや、お前運転中だろ。画面見るなや。そう心の中で呟きながら、運ばれてきたキムチ牛丼を頬張った。口に運ばれるキムチが、いつもより辛く感じた。()